2016.03.23

通勤服のスーツを自宅で洗濯し縮ませる

私はよそ行きの洋服を減らした過去があります。それは今から10年前のことです。その日は朝から良く晴れた洗濯日和でした。小さなアパートで一人暮らしをしていた私はひよっこイラストレーターとして希望に満ちた日々を送っていましたが、作品はすぐに売れるわけではなく、生計を立てるために派遣労働をしていました。

特に秀でたスキルがあるわけではなく、あちこちの職場を転々としていた私にとって、派遣というシステムはとてもありがたいものでした。派遣先企業の人事担当者との面接や通勤用にきちんとした服が必要でしたが、それほど金銭的な余裕があったわけではありません。クリーニング代もばかにならないので、買ったスーツは出来るだけ自宅で洗濯するようにしていました。

その日もいつものように通勤服のスーツを自宅で洗濯しようと思い立ち、部屋の作り付けの小さなクローゼットから一着出しました。それは夏物のスーツで、百貨店のセールで安価で売っていた物です。クリーム色の地に薄い茶色のチェックで、お気に入りでした。ジャケットは丸襟で前身ごろにボタンがついているスカートとセットになっていました。

それまで派遣会社の面接や婚活パーティーなど活用度が高い一着で、何度か着用しているうちに襟や袖が汚れてきたので、さすがに憚られるようになりました。私はそのスーツをきちんとたたみ、前身ごろが上になるようにネットの中に入れて洗濯機に入れました。

幸いそのスーツの表示は手洗い可だったので、洗濯機で洗っても何の支障もないだろうと思いました。他のスーツも手洗いをしていたので、その時が自宅クリーニングは初めてではありませんでした。

アパートは家具・家電付きだったので洗濯機も備えつけでしたが、部屋に置き場がなくベランダに置いてあった。二槽式なので洗濯物によっては自分でボタンを押して、時間や仕様などを調整する必要があります。私は洗濯する時は部屋の掃除をするのを日課にしていたので、洗濯機をスタートさせるとすぐに掃除機をかけました。

1Kの部屋は掃除がすぐに終わります。掃除の後は休日恒例の惣菜作り。私はきれいになった部屋を横目で見ながら、一口コンロで惣菜を作り始めました。いつも作っていたのは常食のラタトゥイユなどのトマト味の煮物とヒジキ煮でしたが、二品の他にも職場に持参する弁当用の副菜を拵えておくのが常でした。

私は洗濯をしている事をすっかり忘れていました。全ての惣菜を作り終えた時、ふとベランダに目をやると洗濯機が小刻みに震えているのが見えたので、大慌てで駆け寄りました。
おしゃれ着を洗濯しているはずが、通常の洗濯仕様のまま小一時間経っていたので不安になりましたが、軽く脱水をしたそれをハンガーにかました。

乾くまでに間があったので、駅前のレンタルビデオ屋に運動がてら行ってDVDを2枚借り、スーパーで足りない食材を買ってから帰ると、ベランダの洗濯物が出迎えてくれました。

戻った時は午後一時を回っていたので、テレビを見ながら残り物でご飯を食べました。リプトンの紅茶を入れて一息入れていると洗濯物が私を誘うように揺れたので、重い腰を上げて取り込みに行きました。私は洗濯したスーツの襟や袖を良く見たが、汚れがきれいに落ちていました。風合いも損なわれず、まあまあでした。
私は「案ずるより産むが易しだな」とつぶやき、乾いた洗濯物を大事にしまいました。これでまた着られると思い、安心したのです。

衣類はちょっと見ただけではわからないものです。私は婚活パーティーに着る服をクローゼットの中から出している時に、ふと思いついて洗濯したばかりのスーツを出してみた。パーティーに着る服の候補に入れようと思ったのです。

他の服と合わせると婚活に着られる服は3着くらいしかありませんでしたが、片っ端から試着しました。他の服はサイズが合っていて良かったのですが、スーツは着られませんでした。タイトスカートのウエストが洗濯でちぢんだためにきつくなったので、はくと下半身がパンパンになってしまいます。

おしゃれ着はおしゃれ着らしいやり方で洗濯すれば良かったと思いましたが、時すでに遅し。そのタイトスカートは私がダイエットしてウエストを15センチ減らさなければ穿けなくなってしまいました。それならダイエットすれば良いのかもしれないが、そんな根性はありません。

結局そのスーツは中古衣料品店のHARDOFFに売りに行きましたが型が古いので売れないと言われ、そのまま処分をお願いしました。