ドライクリーニングの溶剤とはどんなもの?
ドライクリーニングは水ではなく、有機溶剤を使って衣類の汚れをキレイにします。
一般家庭でおこなうドライ洗濯と違って、ウールなど縮みやすい素材のクリーニングができるのはメリットが大きいです。
ドライクリーニング溶剤にはいくつか種類があり、それぞれ特徴が異なるのをご存じですか?
今回は、ドライクリーニング溶剤や種類別の特徴、溶剤管理によって仕上がりが異なることについて解説します。
ドライクリーニング溶剤とは?
ドライクリーニング溶剤は、石油系成分など有機溶剤のことをいいます。ドライクリーニングは、一般的な洗濯のように水を使いません。水の代わりにドライクリーニング溶剤を使って洗います。
水で洗濯すると色落ちや生地の傷み、型崩れが発生しやすい衣類に、ドライクリーニングを用いられます。市販でもドライ専用洗剤が売られていますが、水に専用洗剤を入れて使うため、ドライクリーニング溶剤とは異なります。
ドライクリーニングは、ドライクリーニングの溶剤を使って、衣類の汚れを落としていくのですが、口紅など油性の汚れは落とせますが、醤油や汗ジミなど水性の汚れは落とせないのが特徴です。
また、ドライクリーニング溶剤にはいくつか種類があり、それぞれ特徴が異なります。
クリーニング店は汚れや素材などに合わせて洗剤を使い分けて使います。クリーニング店によってドライクリーニング溶剤が異なるので、どういった溶剤が使われているのか確認すると安心です。
ドライクリーニング溶剤の種類と成分の特徴
ドライクリーニング溶剤は、大きく分けて3種類(パークロロエチレン、フッ素系溶剤、石油系溶剤)で、溶剤によって特徴が異なります。
各ドライクリーニング溶剤の特徴を確認していきましょう。
パークロロエチレン(テトラクロロエチレン)の特徴
パークロロエチレンは比重が1.627と、ドライクリーニング溶剤の中で汚れ落ちが最も高い効果が期待できます。
クリーニング時の「もみ」や「叩き」作用に強く、短時間で洗浄や乾燥ができるため、汚れの目立つ衣料などにおすすめです。
一方、叩き作用が強いことから、スパンコールのついた衣類や柔らかい素材などには向いていません。
フッ素系溶剤(トリクロロエタン)の特徴
フッ素系溶剤は比重が1.55とパークロロエチレンの次に高く、短時間で洗濯や乾燥ができます。
ただ、油汚れの溶解力が弱いため、口紅や油性インクなどの汚れが付着したドライクリーニングには向きません。同時にボタンや樹脂素材を傷めてしまう可能性が高いため、装飾のついた衣類には使われないケースが多いです。
一部のフッ素系溶剤はオゾン層破壊物質とされ、製造が禁止されています。
石油系溶剤の特徴
石油系溶剤は比重が0.77~0.82と3種類の中で一番小さく、油汚れへの溶解力も低いです。そのため、デリケートな素材の衣類に利用され、ドライクリーニング溶剤の中で一番優しい成分として知られています。
クリーニングにより衣類を傷めてしまうようなおしゃれ着など、洗濯マークにも「ドライ&セキユ系」と記されている衣類に使用されるケースが多いです。
ドライクリーニング溶剤は環境汚染により排水できない!
家庭で洗濯をする場合、洗濯した水を捨てて新しい水で洗うのが一般的です。
一方、ドライクリーニング溶剤は、環境汚染の問題から何回も使いまわして使います。同じ溶剤を使い回すことで「汚い」とイメージする人が多いのですが、クリーニング店では溶剤に解けた汚れなどをフィルターでキレイにして使うので大きな心配はありません。
また、クリーニング店によってフィルターで汚れた溶剤をキレイにするのではなく、蒸留め装置の機会によって自動的に溶剤をキレイするところもあります。
ドライクリーニング溶剤で変わる!仕上がりに注意
ドライクリーニング溶剤は、クリーニング店でフィルター交換などをおこない、キレイな状態で洗います。汚れた溶剤を使ってクリーニングすると、衣類の臭いや黒ずみが目立ってしまうため気をつけなくてはいけません。
ドライクリーニング溶剤の管理は仕上がりに最も重視するため、クリーニング店でも徹底した管理をおこなっています。例えば「蒸留装置を使用」や「こまめなフィルター交換」など、管理体制をしっかりしていることを宣伝するクリーニング店は多いです。
しかし、実際にドライクリーニング溶剤の管理をスタッフ以外が見られるわけではないので、信用できません。
キレイなドライクリーニング溶剤が使われているか知るためには、クリーニングの仕上がりでわかります。
次のようなケースは気をつけてください。
・衣類の異臭がする
・衣類に黒ずみがある
・クリーニング前より衣類が重くなった
最もわかりやすいのが臭いですが、石油系溶剤が使われると石油のような臭いを感じる場合があります。このような仕上がりは、不十分な乾燥が考えられるので、クリーニング後に干してみることをおすすめします。
まとめ|ドライクリーニング溶剤は石油系が多い
ドライクリーニング溶剤は、水洗いできない衣類に使われます。溶剤の種類によって油汚れの落ち具合や引火性、沸点などが異なり、クリーニング店では衣類に合わせて使い分けます。
ボタンやスパンコールなどついた衣類などは、ドライクリーニング溶剤によって傷めてしまう可能性があるので、溶剤の特徴を熟知して使い分けるクリーニング店が安心です。
現在2児の母、ライティングの仕事をしながら主婦業に励んでいます。
クリーニング店で長年勤めた経験と知識で家庭でもできる洗濯の知恵をご紹介します。